グランエミシス

エミシスだより

厚生労働省とグループホームの関わり

2020年10月30日

コラム記事

はじめに

障がい者グループホームと認知症グループホームは、どちらも厚生労働省と深い関わりがあります。今回は、厚生労働省がグループホームとどう関わってくるのか調べてみました。

厚生労働省は何をするところ?

基本的なことになりますが、厚生労働省が何をしているところか案外ぼんやりとしたイメージしか浮かばなかったりしませんか?

厚生労働省では、 病気を予防したり、食品の安全を確かめたり、働きたい人に仕事を紹介したり、労働者が安全かつ快適に働ける環境をつくる仕事をしています。

 

 

元々は厚生省(社会福祉、社会保障、公衆衛生の向上・増進を担当)
と労働省(働く環境の整備、職業の安定・人材の育成を担当)
2つの省でしたが、2001年に統合され厚生労働省が誕生しました。そのため、私たちの生活に関わる政策は厚生労働省が担っています。障害福祉制度と介護福祉制度もそのなかの1つです。

グループホームの制度としての歴史

グループホームは元々民間のNPOや福祉施設が始めました。
厚生労働省は障害福祉制度と介護制度を整える中で、グループホームを制度として取り入れたのです。
ここで少し、2つのグループホームが制度上ではどんな歴史を経たのか辿っていきましょう。

・認知症グループホーム

現在の形態に最も近い認知症高齢者グループホームは、高齢者福祉の先進国であるスウェーデンで1980年半ばに発祥しました。
日本では1990年代初めごろ、現在のような形態の認知症グループホームが開設され始め、やがて全国に広まりました。
その後1997年には「痴呆対応型老人共同生活援助事業」として厚生省(現在の厚生労働省)で制度化され、2000年4月から施行された介護保険制度において在宅サービスのメニューの一つに位置づけられました。

・障がい者グループホーム

国の制度としてグループホームが始まったのは1989年、知的障がい者を対象としたグループホームでした。こういった、知的障がい者を対象とした小規模な共同生活の場は、制度以前にも全国各地で「共同ホーム」として運営されていました。続いて1992年に精神障がい者のグループホームが制度化され、2006年の障がい者自立支援法制定により、身体障がい者も制度に組み込まれました。

厚生労働省の取り組み1
認知症対応型グループホーム

・新オレンジプラン

2015年1月、厚生労働省は
「認知症の人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域のよい環境で自分らしく暮らし続けることができる社会の実現を目指す」というコンセプトを基本的考え方に据えて、「認知症施策推進5ヶ年計画(オレンジプラン)」を新たにした「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」
を公表しました。これは省庁を横断する総合的な国家戦略に位置づけられています。

『認知症グループホーム(認知症対応型共同生活介護)については、
認知症の人のみを対象としたサービスであり、地域における認知症ケアの拠点として、その機能を地域に展開し、共用型認知症対応型通所介護や認知症カフェ等の事業を積極的に行っていくことが期待されている』 (出典)「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」厚生労働省

厚生労働省の取り組み2
障がい者グループホーム

・グループホームとケアホームの一元化

2013年までは、介護サービスを必要としない方を対象とした「グループホーム」
介護サービスを必要とする方が対象の「ケアホーム」の2種類があったのですが、
近年ではグループホームに住んでいる方が高齢になり、介護が必要になるなど、グループホームにおいても介護サービスのニーズが高まりました。
それまでは「介護サービスが必要な人」と「介護サービスが必要ない人」を一緒に受け入れる場合、グループホームとケアホーム、2つの類型の事業所指定が必要だったため、
事業所の事務手続きを簡素にしようという目的もあり、2014年4月「グループホーム」と「ケアホーム」を一元化し、グループホームでも介護サービスを提供できるようになりました。

厚生労働省の取り組み3
公的な補助金・融資制度など

グループホームを開設するにあたって必須となる、施設建設費、人件費、家賃などを補助する公的な制度があります。
自治体独自のものもありますが、ここでは全国に適用される制度を2つ簡潔にご紹介します。

・「社会福祉施設等施設整備費補助金」(障がい福祉サービス事業対象)

社会福祉法人等が整備する施設整備に関わる費用の一部を補助し、施設入所者などへの障がい福祉の向上を目的とする制度です。
補助額が事業費の3/4と大きく、営利、非営利法人を問わず補助を受けられます。
ただし、計画から事業開始までに約2年から3年ほどかかること、提出書類が煩雑であること、建設整備に業者を入札で選ばなければならない、などのデメリットも存在します。

・「福祉医療貸付制度」

障がい者または認知症グループホームで利用できる政府系融資制度として「福祉医療貸付制度」があります。
営利、非営利法人問わず融資対象とし、建築資金、設備備品整備資金、土地取得資金、経営資金について、政策融資として「長期・固定・低利」で
融資するWAM(独立行政法人福祉医療機構)が行う融資制度です。

厚生労働省Q&Aより抜粋

 

これまでのことを踏まえても、グループホームについてまだまだ色々とわからないことが多いと思います。
そこで、最後に厚生労働省ホームページのQ&Aから一部抜粋してご紹介します。ホームページ記載の質問・回答の情報が古い場合もあるため、現在の情報と照らし合わせて読むと非常に勉強になります。いろいろ知ったうえで気になるところが出てきたら、厚生労働省のQ&Aで調べてみると良いかもしれません。

 

Q.入院・入所している者だけでなく、在宅にいる者も体験利用することはできるか?

 

A.体験利用の対象者は、入院・入所している者に限定されないので、家族と同居している者も利用は可能である。
家族と同居しているうちから体験利用することは、将来の自立に向けてその可能性を育み、高めていく観点からも非常に重要であり、活用が広がることを期待しているところ。

Q.グループホーム入居者が別のグループホームを体験的に利用することは可能か?

 

A.体験の必要性が認められるのであれば可能である。ただし、同一敷地内又は同一事業所の他の共同生活住居への体験利用については、体験利用にかかる報酬を算定できない。

Q. 日中支援加算(Ⅱ)について、就労している利用者に対して本加算が算定される、「心身の状況等により当該障害福祉サービス等を利用することができないとき」とは、具体的にどのような場合を想定しているのか?

 

A. 体調不良等により出勤ができない場合を想定している

 

まとめ

いかがでしたか?グループホームや福祉事業所の方ではない限り、なかなか制度のことを意識してグループホームを調べることはないと思います。どんな制度を経て現在のグループホームが成り立っているのか、ちょっとだけ意識してみるのもいいかもしれませんね。