グランエミシス

エミシスだより

グループホームでのコロナ対策

2021年05月14日

コラム記事

はじめに

ここでは、グループホームでの新型コロナ対策について、現場の声を聞きながら、その方法を国の指針と共に考えていきたいと思います。

現場の状況

ある障がい者のグループホームで、7人の集団感染が発生しました。“家庭的な温かさ大切にしたい”という思いが、集団感染の背景にあったようです。

消毒や換気は適切だったにもかかわらず、22人の障がい者が暮らすこのグループホームでは、今年9月、利用者5人と職員2人の、合計7人が新型コロナウイルスに感染しました。
利用者たちは、およそ1か月もの間、外出を禁止されていました。

生活リズムや毎日のルーティンが乱れるのを苦手とする利用者たちは、今回のことで多大なストレスを感じていたようだと、施設長さんは語っています。

 

所長さんの話

「共有スペースで皆さんが顔を合わせることさえ控えようという雰囲気があって、部屋でたった1人だけで過ごしてもらう時間が増えてしまいました。
職員や仲間と会話することが一番の楽しみとなっていて、それが社会や人との唯一の関わりだったと思うのですが、その機会をつくることが少なくなってしまい、笑うことも段々なくなったとたいへん気にしていました。表情や体の動きを見て、気が沈んできているのだろうと強く感じました」

なぜ、感染を防ぐことができなかったのでしょうか。
その原因として保健所の担当者から指摘されたのは、なんと、その最も大切にしていた“会話”でした。

“家庭的な温かさを”という思いから、リビングに利用者が集まる場面で、マスクの着用などの対策が十分に行なえていなかったのです。

夕食では、利用者と職員が分け隔てなくテーブルを囲んでいたほか、利用者が職員に一生懸命に話す姿を見ていると、たとえマスクをつけずに会話をしていたとしても、とても注意することはできなかったとのことでした。

「“コミュニケーションを取る”という意味で、リビングに集まる時間というのは非常に大切な時間でした。
利用者さんたちにとって施設は家族のようなものですが、自分が家にいてマスクをつけたり、また、子供と距離を取って食事をしたりしているか、というと普通はそうではありません。
マスクをしていないことで、はじめて表情がこちらからうかがえますし、できるだけ制限をかけたり、何かを強要したりすることはしないで、本人たちのあるがままの生活を送ってもらう、というのも最も大切にしてやっていたところでは大いにあります」

 

新たに「対話する時間」

施設ではその後、マスクの着用を徹底しつつ、いっしょの食卓にみんなで集まる時間はそのままに、利用者さん同士が向き合わないように食卓を配置し直しました。
また透明な仕切りも設置しました。

ただ、心配なこともありました。
マスクを着用して顔が良く見えない状態や、互いに向き合わずにご飯を食べる状態が続くと、コミュニケーションが減ってしまって、利用者の生活の楽しみが失われてしまうのではないかと特に心配したのです。

そこで施設では、利用者と対話する機会を今後も守っていこうと、1対1で利用者の話を聞く「対話する時間」というものを新たに始めました。

その日にあった嬉しかったことや、悲しかったこと、それに加えて悩みなど、職員たちがじっくりと話を聞きます。
自分が訪問した日には、70歳の女性がコロナの影響で福祉作業所での仕事が減ったと、彼女なりの悩みを話していました。

集団感染は起きてしまったものの、一人ひとりの利用者の気持ちを大切にした接し方を発見することができたとして、よしとしています。

 

所長さんの話

「マスクをつけたから、または仕切りを置いたからコミュニケーションが取りづらくなる、というのではなく、利用者といかに交流を持つのかを考えていきたいと思います。
一人ひとりが穏やかに生活していくためにやれることは他にもあると思いますので、コロナ対策をしながらも支援の工夫を重ね続けていければいいなと思っています」

 

グループホームで新型コロナウイルスの感染者が発生した場合の対応方法(国の指針)

以下引用―

『5月4日付け事務連絡により障害者支援施設における新型コロナウイルス感染症発生時の具体的な対応が示されたところである。

グループホームの利用者について、新型コロナウイルス感染症の患者が発生した場合、感染症法に基づく入院措置が行われることとなるが、「軽症者等」(「新型コロナウイルス感染症の軽症者等に係る宿泊療養及び自宅療養の対象並びに自治体における対応に向けた準備について、本文にいう「高齢者や基礎疾患を有する者など以外の方で、症状がない又は医学的に症状が軽い方」をいう。以下同じ)については入院しない場合があり、グループホーム内で療養する場合に備え、当該事務連絡を参考に、必要な準備や感染症対策等を行うこと。

その際、グループホームは、看護職員の配置や1日を通じた常時の人員体制が必須とされておらず、また、小規模な住居であること等、障害者支援施設とは環境が異なる点があることを踏まえ、特に、以下の点について留意すること。

【医療との連携体制の確保】
グループホーム内で療養する場合には、医師や看護職員等の訪問による診療や看護が必要となるため、管理者はあらかじめ協力医療機関等と相談し、医療との連携体制の確保について検討しておくこと。

【人員体制の確保】
病状急変時の対応や、感染している利用者、濃厚接触者及びその他の感染していない利用者との生活空間等の区分け(いわゆるゾーニング)を図る観点から、1日を通じた常時の人員体制の確保を検討すること。
その際、グループホーム職員が感染し、生活支援のための最低限の体制も確保できないことも想定した人員体制の確保策を検討しておくこと。

また、都道府県等の福祉部局においては、グループホームを運営する法人内の職員だけでは最低限の体制も確保できない場合の応援体制について、関係団体等と相談をしておくこと。
※ 上記の体制確保については、グループホームに対する看護職員配置加算、医療連携体制加算、夜間支援等体制加算、日中支援加算(Ⅱ)の算定対象となり得る。

また、応援体制については、別途、令和2年度補正予算(第1号)に計上している「社会福祉施設等の介護職員等の確保支援」の活用が考えられる。

【生活空間等の区分け】
小規模な住居であるグループホームの構造を踏まえた生活空間等の区分けの方法について検討しておくこと。』

出典:障害者支援施設における新型コロナウイルス感染症発生時の具体的な対応について

 

グループホーム内での療養を行うことが
考えられる利用者が発生した場合の対応

以下引用―

『PCR 検査の結果が陽性であることが確認され、かつ、当該利用者を診察した帰国者・接触者外来等から、入院を要する症状でないと判断され、障害特性などからグループホーム内での療養も考えられる旨の連絡があった利用者であっても、上記の医療との連携体制の確保、人員体制の確保、生活空間等の区分けの方法などの状況も十分に勘案しながら、グループホーム内での療養を行うことについて、保健所は、管理者と相談の上、最終的な検討を行うこととなる。

その際、管理者は、当該グループホームで実施可能な医療との連携体制、人員体制、必要な物品の確保の見込み、グループホームの構造を踏まえた生活空間等の区分けの方法、感染者以外の利用者の基礎疾患の状況等について、保健所に的確に伝えること。』

出典:障害者支援施設における新型コロナウイルス感染症発生時の具体的な対応について

 

まとめ

新型コロナの終息については、まだまだ今後の対策次第で、どのような状況になっていくかは予想ができませんが、グループホームにおいても、今後も基本的な対策は変わらず行っていかなければなりません。

とても生きにくい時代とはなっていますが、決して希望を失わないようにし、今できる工夫を実行しつつ、お互いにこの状況を乗り越えていきましょう。