グランエミシス

エミシスだより

グループホームと生活保護

2020年06月09日

コラム記事

はじめに

生活保護とグループホームとの関係について知りたいと思っている方も多いかもしれません。
保護をすでに受けているのだけど、グループホームに入れるのだろうか?
とか、グループホームを利用している場合でも生計維持ができなくなった場合、保護を受けることはできるのだろうか?など心配しておられる方もいらっしゃるでしょう。

今回は障害者グループホームと生活保護を関連付けながら説明していきます。
生活保護を受けている方、これから受けようと思っている方も、ぜひ参考にしてください。

生活保護を受けていてもグループホームに入れるか?

 

基本的には可能です。グループホームに入居するには、「障害者手帳」と「障害福祉サービス受給者証」が必要になります。お持ちでない方は、まず障害者手帳と障害福祉サービス受給者証の申請をしましょう。

現在居住の自治体ではなく他の自治体のグループホームに入居することもできますが、その場合の生活保護は現在の自治体のままで継続されます。
近隣ならば良いのですが、遠方のグループホームに入居すると、医療券※を取りに行くのに大変手間がかかります。
それを持って病院に行くと保険適用の診療は原則無料になります。自分でお金を負担する必要はありません。
ですから、医療券※を持たずに病院に行ったり、指定されていない病院に行ったりすると高いお金がかかるので、注意してください。

グループホームの家賃は、生活保護の家賃扶助の基準額内であれば全額まかなわれます。
基準額はグループホームの所在地の基準によります。
また、生活保護受給者または市町村民税非課税世帯であれば、国から月額1万円を上限とした家賃助成制度を利用できます。

一方、生活保護受給者に治療の必要が新たに生じた場合は、所管の福祉事務所に受給者が医療扶助の申請を行います。
福祉事務所は医療の必要性を検討後に医療扶助の給付を決定し、医療券・調剤券を発行します。

※医療券
生活保護を受給すると、国民健康保険の資格を失い、代わりに医療費の全額が医療扶助でまかなわれます。
保護の開始時に医療券・調剤券の交付を受けます。

障害者グループホーム入居中、生活保護を申請することはできるか?

可能です。生活保護移行防止策として利用者負担への配慮もありますが、それでも生活が苦しい場合、役所の福祉課へ行って生活保護の申請をしましょう。
通常はグループホームへ入居すると住民票もグループホームの市町村に移しますが、もし住民票を移していない場合は世帯分離が必要になります。

障害年金受給者がグループホームを利用しようとした場合の費用は幾らかかるか?

障害年金2級該当者だと年間の受給額は78万8,900円、つまり月額にして6万5,741円です。2019年10月の消費税増税を受けて、要件を満たす方は「年金生活者支援給付金」も給付され、障害年金2級の方は5,000円上乗せされることになりました(毎年度、物価変動に応じて改定されます)。合計して月額約7万円です。

これに対してグループホーム利用者は家賃、食費、利用者などを含め通常8万~10万円かかるとされています。
家賃補助で負担が軽減されるところもありますが、障害年金以外に収入がない障がい者にとっては収入を上回る費用負担ができないので、グループホームの利用料によっては入居を断念せざるを得ません。

ところが、生活保護を申請して受給者になると、給付金約10万円以外も、医療費は公費負担になり、家賃助成もあり、自己負担が免除・軽減されるという特典があるのです。

しかし総合的に考慮したとき、できるなら障がい者が生活保護に頼らず、障害年金だけで自立した生活をすることが勧められています。

生活保護受給者と受給者以外の料金の違い

家賃(秋田県のグループホームの例)

生活保護受給者:31,000円/月
生活保護受給者以外:35,000円/月

・前家賃支払いとし、敷金は1か月分とする。
・月の途中で入退居した場合は日割り計算とし、日割りによる合計した額から市町村による家賃助成額を差し引いた額とする。

※日割
生活保護受給者:1,050円/日
生活保護受給者以外:1,150円/日

サービス受給に対する自己負担 定率1割ですが生活保護・低所得の方等は無料。

家賃助成

グループホーム(重度障害者等包括支援の一環として提供される場合を含む)を利用する生活保護または低所得世帯の方が負担する家賃に対して、利用者1人当たり月額1万円を上限に補足給付が行われます。

※補足給付額
家賃が1万円未満の場合=実費
家賃が1万円以上の場合=1万円

生活保護への移行防止策が講じられる

家賃補助などを利用しても生活が苦しく生活保護の対象となる場合には、自己負担の負担上限額や食費などの実費負担分の引き下げを行います。

生活に必要な費用がある場合、不足があっても生活保護に移行しない様、負担を軽減する仕組みがあり、軽減しても不足する場合には生活保護でサポートされるのです。

生活保護の方がグループホームを選ぶ際には下記のことに注意

  • 障害者手帳、障害福祉サービス受給者証を持っているか
  • グループホームの所在地に住民票があるか(入居したい生活保護対応のグループホームが
    居住地域と違う場合、住民票を移し、その自治体に生活保護申請をする必要がある)
  • グループホームの家賃は住宅扶助の基準額以内か

グループホーム等に係る補足給付については、年齢に関わりなく、低所得(市町村民税非課税)の世帯、または、生活保護世帯に属する障がい者を支給対象とすることとしています。
忘れずに申請しましょう。

生活保護制度についての基本

生活保護制度とは、生活に困窮する方に対し、その困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、自立を助長することを目的としています。

生活保護の8種の扶助

1、生活扶助

生活扶助では、衣食その他日常生活に必要な給付を原則現金で給付を行います。

2、住宅扶助

住宅扶助は最低限必要な住居や、住居の補修その他住宅の維持にも必要なものを、金銭で給付を行います。

3、医療扶助

医療扶助は、発行された医療券を提示すれば、診察、薬剤、治療、看護等、医療を無料で受けられる扶助です。

4、介護扶助

介護扶助は介護保険の居宅支援被保険者等に対して行われる扶助です。
介護サービスが無料で受けられます。

5、教育扶助

教育扶助は、主に小中学の必要な教科書、学用品、通学用品、給食費などを主に現金で扶助するものです。

6、出産扶助

出産扶助では、出産に必要な介助や処置、脱脂綿、ガーゼその他の衛生材料を現物で給付を受けることができます。

7、生業扶助(せいぎょうと読む)

生業扶助とは生業に必要な資金、器具や資料を購入する費用、技能を習得するための費用、就労に必要なものについて金銭または現物を受けることができます。

8、葬祭扶助

葬祭扶助は葬祭費用に足りない金額が支給されます。

支給される保護費

厚生労働大臣が定める基準で計算される最低生活費と収入を比較して、収入が最低生活費に満たない場合に、最低生活費から収入を差し引いた差額が保護費として支給されます。

まとめ

このように、どうしても生活が苦しい場合は生活保護に頼ることもひとつの手段です。
もちろんさまざまなケースがあるので、自分に最も合った社会資源を活用するために、役所の福祉課やNPO等で相談したり、あるいは地元の施設等を探したりしながら、今後の対策を進めていくことが良いでしょう。