グランエミシス

エミシスだより

高齢者とグループホーム

2020年06月22日

コラム記事

はじめに

障害者グループホームの対象者は、身体障がい者、知的障がい者、精神障がい者、難病患者等です。
身体障がい者の場合、65歳未満の方または65歳に達する日の前日までに障害福祉サービスもしくはこれに準ずるサービスを利用したことがある方に限られます。

なぜ身体障がい者の場合だけ年齢に関する記載があるのでしょうか?
この部分についてご説明していきます。

障がい者の65歳問題とは?

あなたは「障がい者の65歳問題」や「65歳の壁」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。
この問題に深く関わってくるのが障害福祉サービスと介護保険サービスの関係です。

図を参照

 

 

障害福祉サービスは、障害者総合支援法が定めるサービスです。そのなかには、障害福祉サービスにしかないサービスと介護保険サービスに相当するものがあります。
後者の場合、訪問系では、介護保険の訪問看護に相当する「居宅介護」や「重度訪問看護」があります。

これらの障害福祉サービスを利用している方が65歳以上になると、原則として介護保険サービスを優先的に使うことが求められます。

先ほどの例でいえば、障害福祉サービスの「居宅介護」を利用していた方が、介護保険サービスの訪問看護を利用する、という具合です。
この場合、なじみの事業所を変えなければならないという問題が発生します。

また、障害福祉サービスは収入に応じて費用を負担する「応能負担」(市町村民税非課税者などの低所得世帯は利用負担なし)なのに対して、介護保険サービスは基本的に1割負担(一定以上の所得がある場合は2割または3割)なので、65歳になってから金銭的負担が増えてしまう、という不都合も起こります。

こういった問題を「障がい者の65歳問題」「65歳の壁」といいます。
市町村ごとの判断によって、そのまま障害福祉サービスを継続できるケースもありますが、金銭的負担が増えるだけではなく受けられるサービスの内容や回数、時間が減る場合もあり、65歳を迎える障がい者にとって大きな問題です。

 

65歳問題の解消法

そこで65歳問題の救済策として、2018年4月の改正介護保険法と改正障害者総合支援法により制度が変わりました。

1つは、なじみの事業所を変えずにこれまで通りのサービスを受けられるように、障害福祉サービスの事業所が介護保険サービスの指定を受けやすくする「共生型サービス」という仕組みです。

障害福祉サービスと介護保険サービスの双方に「共生型サービス」というサービス類型を作ることで、同じ事業者が双方のサービスを提供できるようになりました。

もう1つは、介護保険サービスに切り替えたことにより金銭的負担が発生する低所得者のために、障害支援区分2以上などの要件を満たせば償還払い(※)による負担軽減がなされる「新高額障がい福祉サービス等給付費」です。

 

(※)償還払い
介護サービスを利用した際に、費用を利用者が全額支払った後、自治体などに申請して払い戻しを受けること。

 

新高額障害福祉サービス等給付費の詳しい要件はこちらです。

▽65歳に至るまで5年間にわたって障害者福祉サービスの提供を受けていること

▽障害者福祉サービスの居宅介護、重度訪問介護、短期入所、生活介護と、介護保険サービスの訪問介護、通所介護(地域密着型を含む)、短期入所生活介護、小規模多機能型居宅介護の利用者

▽所得が低いまたは生活保護に該当していること

▽障害支援区分が2以上

▽65歳まで介護保険サービスを利用していないこと

冒頭で障がい者用グループホームに触れましたが、その他の高齢者が利用することができるグループホームもご紹介します。

共生型グループホーム

重症心身障がい者と知的障がい者や認知症高齢者などが、ひとつ屋根の下で年齢や障がいの内容・程度を超えて、あるいは地域との関わりの中で生きがいや役割を持ちながら豊かに暮らすことを目的としたケア(サポート)付きの住まいです。

「障がいのある子が大きくなり、親が年老いて認知症になっても親子で一緒に住む場が必要ではないか」、「認知症高齢者と障がい者が一緒に住むことによって、ケアの相乗効果が期待できるのではないか」という発想のもとに生まれました。

認知症対応型共同生活介護

65歳以上、要支援2または要介護1以上の認知症患者であることが入居条件です。
また、地域密着型サービスであることから、施設と同一地域内に住居と住民票があることも条件に挙げられます。

住民票を持ってからの期間を条件として設けている自治体もあるため、入居を検討している施設がある場合は個別に問い合わせてみる必要があります。

 

<認知症対応型共同生活介護の入居条件>

  1. 65歳以上の高齢者で、要支援2または要介護1以上の認定を受けている方
  2. 65歳未満の若年性認知症、初老期認知症と診断された、要支援2または要介護1以上の認定を受けている方
  3. 医師により認知症の診断を受けた方
  4. 施設と同じ市区町村に住民票がある方
  5. その他、集団生活に支障のない方
    (身の回りの世話ができる、感染症にかかっていない、共同生活に適応できるなど、施設によって設定)

 

このように、障がい者の方が65歳を超えると、制度上の問題からいろいろと複雑なルールがあり問題が生じていましたが、多少柔軟に対応できるようになってきたこともあって、問題が解消されつつあります。

 

まとめ

今後もまだまだ調整が必要になるかと思いますが、より一層利用者が活用しやすくなるよう改善されていくことを願っています。