認知症高齢者の方がグループホームに入るには
2020年09月28日
コラム記事
はじめに
認知症のご家族を介護している方の中には、自分の仕事が忙しかったり、離れて暮していたりして、ずっとそばにいてあげられない方もいることでしょう。そんな方に知っていただきたいのがグループホームです。
今回は認知症の高齢者の介護をしているという方に向けて、認知症対応型のグループホームについてご説明します。
グループホームとは
認知症の高齢者が専門スタッフの援助を受けながら共同生活を送る小規模の介護施設です。
専門スタッフの援助を受けながら自分でできる範囲の料理や掃除などを行い、生活します。
入居者は5人~9人の「ユニット」とよばれる集団に分かれて暮らします。ユニット数は最大3ユニットまでと決められています。以前は2ユニットまででしたが、2021年の介護報酬改定でユニット数が3以下に緩和されました。
居室は個室、ユニット内に共有の食堂、台所、居間、風呂、洗面所、洗濯場、トイレ等を完備して、ユニット内で生活できるように配慮されています。
グループホームと有料老人ホーム、老健との違い
認知症の診断を受け、要介護1または要支援2以上の認定を受けている65歳以上の方が入居対象となります。
集団生活に適応できる方が対象なので、認知症の進んだ方、寝たきりの方は入居することができない場合もあります。
有料老人ホームの場合、施設によって状況が違いますが、介護付き有料老人ホームは介護・看護体制が整っており、重度の要介護者を受け入れることも可能です。
また、有料老人ホームはグループホームと比べると入居者数が多いため、より介護施設としての性格が強いといえます。
介護老人保健施設(老健)はリハビリがメインで、入居者が在宅復帰することを目的とした施設です。在宅復帰できる状態になったら退居します。基本的に3カ月から6カ月利用できます。長期間利用する施設ではないためグループホームより入居待ち期間が短く、3カ月から半年ほどで入居できることが多いです。
どんなサービスが受けられる?
専門スタッフによる掃除、洗濯、食事といった家事全般の介助や、通院の付き添い、機能訓練、緊急時対応などのサービスが受けられます。
認知症ケアの一環として、入居者自身が援助を受けながら買出し、調理、掃除などを行うことも特徴的です。
主に健康状態の良い認知症の方が入居しているので、認知症への効果が期待される音楽療法、園芸療法、手先を動かすものを中心としたレクリエーションプログラムが組まれます。
他にも地域のお祭りへの参加や公園の清掃など地域交流を積極的に行う施設もあります。
料理や洗濯といった家事先般を自分で行い、自立した生活を送ることで、認知症の進行を遅らせることにつながるのです。
入居条件
入居条件は以下の4つです。
1.65歳以上の高齢者で、かつ介護保険で要支援2または要介護1以上の認定を受けている方
2.医師に認知症の診断を受けた方
3.集団生活を営むことに支障のない方
4.施設と同一の市区町村に住民票がある方
自分の身の回りのことがある程度できる方が対象となります。寝たきりの方、周囲の人に危害を及ぼす方や医療面のケアが必要な方は入居できません。
入居費用について
まず入居一時金や保証金といった初期費用が必要になります。
これらの初期費用は賃貸物件で言うところの「敷金」にあたり、施設を退居するときに一部返還されます。これらの初期費用は施設によって0円から数百万円と大きな差があります。
入居後に発生する費用は「介護サービス費」と「生活費」の2つです。
介護サービス費は介護保険サービスを利用すると対価として介護事業者に支払われる介護報酬で、多くの人の自己負担額は介護サービス費の1割です。現役並みの所得がある高齢者の方は2割または3割負担となります。
生活費の内訳は、グループホームの家賃・光熱費・食費など日常生活で発生する費用です。
居住費は居室の大きさや立地などにもよりますが、一般的には都市部のほうが高いといわれています。
そのほかの雑費としては、散髪代や娯楽費、おむつ代などがあたります。施設によって異なりますので、こうした費用がいくらになるのかしっかり確認しておきましょう。
入居前に気をつけたいこと
・入居待ち期間に注意
グループホームは定員数が少ないため、入居までにかなり待つことになります。
事前に見学したり、必要書類を揃えたり、事前にやらなければならないこともさまざまあります。
数ヶ月、場合によっては数年程度の入居待ち期間が発生する可能性があると考えておきましょう。
・入居には住民票と診断書が必要
グループホームは、介護保険制度の「地域密着型サービス」に分類されています。
要介護度が高くなってもこれまでと同じ生活が送れるよう、地域の利用者に介護サービスをを提供するために、市区町村が運営するサービスです。
そのため、利用したい施設と同じ地域に住んでいる人が利用対象となります。同じ地域に住んでいることを証明するために必ず住民票が必要です。
また、認知症患者を対象とした施設ですので、認知症であることを証明する診断書も必須です。
・ショートステイや体験入居で雰囲気をつかもう
入居の前にショートステイや体験入居であらかじめグループホームの生活を体験することが可能です。
ショートステイを利用するには自宅でお世話になっているケアマネージャーへ相談しケアプランの作成することが必要です。
介護者である家族が長期間家を離れるときや、介護者が一時的に介護から離れ、休息するために利用されることが多く、最大で30日利用できます。
体験入居は保険適用ではありませんが、事前にその施設の雰囲気を知ることができるため、入居先を探している方にお勧めです。
入居後に「この施設は自分に合わないな……」と後悔することのないように、事前に体験入居して施設を利用しておくとよいでしょう。
空室がないとショートステイや体験入居の利用できないので、あらかじめ確認する必要があります。
まとめ
すぐに入居できるところではありませんが、グループホームは認知症の方にとって過ごしやすい環境が整っています。
認知症の診断を受け、ご自宅での生活に不自由を感じたら、入居に向けて準備を進めるとよいと思います。
すでに本人の認知症が進み、ご家族の介護負担が重いものになってきたら、積極的に入居先を探しましょう。
入居までに時間をかけたくない場合は、なるべく多くの施設をピックアップしてその中から選ぶつもりでいたほうがよいかもしれません。
本人にとってもご家族にとっても、心穏やかに暮らすための選択肢の一つとなることを願っています。