特養とグループホーム
2021年01月08日
コラム記事
はじめに
特養などの施設に入りたいと思ったときに、どうやって入るのか、どのようなサービスが受けられるのか、 費用はどのくらいかかるか等が疑問で、グループホームなどの施設と特養と、どちらがいいのかわからないことも多いと思います。
そこで今回は特養について見ていきたいと思います。
特養(特別養護老人ホーム)とは
特別養護老人ホームは、介護老人福祉施設とも呼ばれ、公的な介護保険施設の1つです。
原則として終身に渡って介護が受けられる施設です。
民間運営の有料老人ホームなどと比べると費用が安いのが特徴です。
特別養護老人ホームの種類
▽広域型特別養護老人ホーム
定員が30人以上の特養で、どこに住んでいても入居申し込みが可能です。
▽地域密着型特養(サテライト型と単独型)
こちらは定員が30人未満で、原則として施設が所在している地域に住んでいる人だけが申し込めます。
地域密着型特別養護老人ホームは、以下の2つに分かれます。
・サテライト型
サテライト型は、サテライト型居住施設とも呼ばれます。
定員が30人以上の特別養護老人ホームが本体施設となり、連携を取りながら別の場所で運営される施設です。
本体施設から通常の交通手段で20分以内に設置されています。
・単独型
通常の特別養護老人ホームと同等の設備や介護サービスを、単独で提供する小規模な施設を指します。
▽地域サポート型特別養護老人ホーム
在宅介護をしている方を対象に、見守りなどのサービスを提供する施設です。
入居条件
・65歳以上で要介護3以上の高齢者
・40歳~64歳で特定疾病が認められた要介護3以上の方
・特例により入居が認められた要介護1~2の方
特別養護老人ホームへの入居条件は上記の通りですが、看護師の24時間配置は義務づけられていません。
そのため、施設側の看護師体制などにより24時間ケアを必要とする方や看取り希望者の受け入れができないケースがあります。
また、感染症を持つなど「集団生活が難しい」と判断される方も入居は困難です。
なお、要介護1~2の方でも、在宅での介護が困難な状態が見受けられる場合は特例として認められるケースがあります。
要介護1~2の方の入居条件
・認知症で、日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さ等が頻繁に見られること。
・知的障害・精神障害等を伴い、日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さ等が頻繁に見られること。
・家族等の深刻な虐待が疑われること等により、心身の安全・安心の確保が困難であること。
・単身世帯である、同居家族が高齢または病弱である等により家族等の支援が期待できず、地域での介護サービスや生活支援の供給が不十分であること。
入居までの順番は、毎月地域ごとに入居判定委員会が開かれ決定されます。
介護度や家族の状況などから緊急度が点数化され、点数が高い順に入居できます。
メリット・デメリット
メリット
<費用が安い>
一時金はなく、所得に応じた費用の減免制度もあります。
<24時間介護が受けられる>
介護スタッフは24時間常駐し、必要な時に適切な介護を受けることができます。
<原則として終身にわたり入所できる>
長期入所が前提であり、原則として終身にわたり介護を受けることができます。
<倒産のリスクが少ない>
特別養護老人ホームは公的な施設で、経営は地方自治体か社会福祉法人に限られています。開設許可を得るに当たっては収支等の厳しい審査があり、補助金や税制面で優遇されるなど、民間企業に比べ倒産のリスクは少ないといわれています。
デメリット
<入居できるのが原則要介護3以上>
要介護1~2でも入居できるケースがありますが、その要件は厳しく決められています。
<入居できるまで時間がかかる>
待機者は一時より減少していますが、まだ地域差があり、場合によっては入居まで数年かかることがあります。
<医療体制に限界がある>
24時間の看護師配置は義務づけられていないため、施設側の体制によっては夜間のたん吸引など、医療依存度の高い方の受け入れができないことがあります。
設備と居室
特別養護老人ホームでは、設置しなければならない設備が定められ基準が設けられています。代表的なものは下記の通りです。
<居室>
・居室の定員は、4人以下
・入居者一人当たりの床面積は10.65㎡以上
・寝台又はこれに代わる設備を備える
・入居者の身の回り品を保管することができる設備を備える
・ブザー又はこれに代わる設備を設ける、など
<浴室>
・介護を必要とする者が入浴するのに適したもの(機械浴など)とする<トイレ>・ブザー又はこれに代わる設備を設ける
・介護を必要とする者が使用するのに適したものとする<医務室>・入居者を診療するために必要な医薬品及び医療機器を備える
・必要に応じて臨床検査設備を設ける
<その他>
・廊下の幅は、1.8メートル以上(中廊下にあっては、2.7メートル以上)とする。ただし、廊下の一部の幅を拡張することにより、入所者、職員等の円滑な往来に支障が生じないと認められる場合には、1.5メートル以上(中廊下にあっては1.8メートル以上)とすることができる。
・廊下、トイレその他必要な場所に常夜灯を設ける
・廊下及び階段には、手すりを設ける、など
居室は、4つのタイプに分かれています。
居住費(賃料)はそれぞれに異なります。
費用
特別養護老人ホーム(特養)は、介護を必要とする人が、家庭の代わりとして暮らすことのできる公的な施設です。
介護保険が適用され、自己負担額が比較的安い介護施設となっています。
有料老人ホームのような入居一時金はなく、負担は月々の利用料のみ。さらに施設介護サービス費は介護度と収入によって決定するなど、所得の低い方が利用しやすいように配慮されています。
費用の内訳
▽施設介護サービス費
施設介護サービス費は介護を受けるための費用です。サービス費は要介護度などによって異なり、要介護度が高くなるほど、高額に設定されています。また、居室のタイプによっても異なっています。
それぞれの居室タイプ別に、要介護1~5の方の施設介護サービス費を以下の表にまとめました。
※特養の入居条件は要介護3以上ですが、要介護1、2も特例での入居が認められているため、要介護1より記載しています。
▽介護サービス加算
施設の設備や職員の体制、施設で対応する処置やサービスなどに応じて基本料に加算される施設介護サービス費のことです。
施設によって加算徴収内容は異なりますが、加算が多いほど手厚い人員配置やサービスを行っていると考えてもよいでしょう。
▽居住費
いわゆる「家賃」に相当する費用です。
有料老人ホームにおいては、ベッドや家具などを自分で用意しなくてはなりませんが、特養はあらかじめ備品として用意されているのが特徴です。
▽食費
食費は1日3食分が含まれているため、「外出及び外泊によって昼食のみ停止した」などの場合でも1日分とみなし請求されます。
ただし、外泊や入院などにより、数日施設に戻らない場合は食事を止めることができ、欠食分は請求されません。
▽日常生活費
医療費、理美容、被服費、入場料などが発生するレクリエーション費、嗜好品などは自己負担になります。
ただし、クリーニングを必要としない私物の洗濯や、おむつ代(尿取りパッドなども含む)は施設の負担となります。
▽特養の費用を軽くする仕組み
特養は介護保険制度の「介護老人福祉施設」、老人福祉法の「特別養護老人ホーム」の2つの名称が掲げられているとおり、高齢者保護の機能があります。
そのため、有料老人ホームなどへの入居が困難な低所得者や生活保護受給者でも入居できるよう、利用者の負担が軽くなる「社会福祉法人等による利用者負担の軽減制度」が設けられていたり、個人の収入や年金に応じて利用負担が軽くなる「特定入所者介護サービス費」という制度が存在したりします。
※「社会福祉法人等による利用者負担の軽減制度」を実施していない法人もあります。
特定入所者介護サービス費(負担限度額認定)とは
所得や資産等が一定以下の方に対して、その方の負担限度額を超えた分の居住費と食費の負担額が介護保険から支給される制度です。
なお、特定入所者介護サービス費の利用には、事前に市町村に負担限度額認定を受ける必要があります。
食費・居住費の負担限度額
利用者は、その収入や年金に応じて、「利用者負担段階」が定められます。この段階別に、特別養護老人ホームの負担限度額が決定されます。
入居した場合の月々の費用
特別養護老人ホームの費用は、入居者本人とその配偶者・子供(扶養義務を負っている人)の合計所得によって負担限度額が決定します。
合計所得とは、年間収入から公的年金控除や給与所得控除、必要経費を引いた後で、基礎控除や、本人や扶養家族の状況による所得控除をする前の所得金額です。課税所得ではないので注意してください。
以下より、介護度、居室タイプ別に月々に支払う金額の目安をご紹介します。介護サービス加算は施設や入居者の方の状態により変動するため、この表では省略しています。
※特養の入居条件は要介護3以上ですが、要介護1、2も特例での入居が認められているため、要介護1より記載しています。
例
特別養護老人ホームの月々の費用の目安(利用者負担第4段階(住民税課税世帯)・30日間の場合)
以上の表は、介護サービスの自己負担が1割だった場合の金額ですが、合計所得金額が160万円以上、単身で年金収入のみの場合です。
年収280万円以上ある場合は、介護サービスの自己負担割合が2割負担に。340万円以上の場合は3割負担となります。
上記の「特養の費用の仕組み・費用負担を軽くする制度」で説明したとおり、本人および世帯全員が生活保護の対象であったり、収入が少なかったりすれば、居住費や食費は低く設定され、介護サービス費についても高額介護サービス費などの補助金が自治体から支給されます。
そのため、実際の自己負担金額については、入居を希望している施設に確認しましょう。
入居の申し込み方法
特養への入居の申し込みには、複雑な手続きは必要ありません。
ただし、施設や自治体によって申込書に記載する内容や必要書類が異なるので、その点には注意が必要です。
- 入居を希望する施設から、訪問や郵送で申し込み書類を入手します
- 入居申込書をはじめ、介護保険証のコピーなど提出する書類をそろえます。
施設や市町村によっては、介護認定調査票の写しや健康診断書なども必要です - 必要な書類をそろえたら、入居を希望する施設に直接申し込みます。
希望する施設が複数あるときは、施設ごとに申し込む必要があります。
入居決定後の手続き
特養に入居を申し込むと、施設が審査を行います。
もし入居できる場合は、施設から連絡があります。
入居が決まってからの必要な手続きは以下になります。
- 入居できるという連絡が来たら、施設側と入居予定日の調整を行います。
施設で話し合いを行うときは、施設側が送迎を行ってくれるケースとそうではないケースがあるので、事前に確かめておくと良いでしょう。 - 施設または自宅において、契約書や身元引受書、さらには重要事項説明書など多数の書類に関する説明を受け、署名および捺印をします
- 入居後は、特養の所在地に住民票を異動しておく必要があります。
住所変更を行わないときは、老人医療関係や介護保険関係の郵便物が施設に届くようにしておきましょう。
入居できる期間
特養は基本的に人生の最期まで入居することが可能な施設ですが、途中で退居が必要になることもあります。
特に多いのは、体調の悪化が退去のきっかけになるケースです。
特養では専門的な医療ケアを受けることができないため、3ヵ月を超える入院が必要になった場合は退去しなくてはなりません。
また、認知症が悪化した場合も退去の原因になり得ます。
周りの入居者や職員に暴力を振るったり迷惑を及ぼしたりしてしまう場合は、退去を要請されることがあります。
周囲に迷惑をかけない場合でも、絶えず見守りが必要であれば、施設では対応できないため退去を余儀なくされることがあります。
いずれにしても入居の前に、退去になったケースについて確認しておくことが大事です。
入居後も、家族は定期的に施設を訪れたり、職員と連絡をとったりして、入居者の状態をできるだけ把握しておくようにしましょう。
まとめ
このように特養ならでは様々なサービスがあり補助の制度もありますので、グループホームなどの施設と比較しながらどこに入るかしっかり下調べをして決めましょう。