グランエミシス

エミシスだより

障害者手帳とは

2020年08月18日

コラム記事

はじめに

障害者手帳とは障がいのある人に交付される手帳のことです。手帳の取得は任意ですが、手帳を持つことでさまざまなサービスを受けることができ、生活の幅が広がり社会に参加しやすくなるなどのメリットがあります。
障害者手帳取得の流れから、取得してから受けられるサービスについて詳しくご紹介します。

 

障害者手帳は3種類

障害者手帳の種類は身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳、療育手帳の3種類です。複数の障がいを持つ場合は、それぞれの手帳の交付を受けることができます。
(療育手帳と精神障害者保健福祉手帳の組み合わせは、どちらか一方となるケースが多いようです)

 

 身体障害者手帳

身体障害者福祉法が定める「身体上の障がいがある18歳以上の者」にあてはまる方が対象です。
1級から6級までの等級があり、数字が大きくなるほど障がいの程度が軽くなります。7級の障がいは2つ以上あると手帳の対象となります。

 

【対象となる障がい】

・視覚障がい
・聴覚や平衡機能の障がい
・音声機能、言語機能、そしゃく機能の障がい
・肢体不自由
・心臓やじん臓、呼吸器の機能の障がい
・膀胱や直腸の機能の障がい
・小腸の機能の障がい
・ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能の障がい
・肝臓の機能の障がい

 

【 取得条件 】

疾病によって障がいが永続し、生活動作が不自由であること

 

 精神障害者保健福祉手帳

精神保健福祉法にもとづいた制度で、精神疾患のある方に交付される手帳です。障害等級は3級から1級までで、数字が大きいほど障がいの程度が軽くなります。
何らかの精神疾患により長期にわたって日常生活に制約が出ている方が対象となります。2年おきに更新する必要があり、更新の際には主治医の診断書が必要です。

 

【 対象となる疾患 】

・統合失調症
・うつ病、双極性障がいなどの気分障がい
・てんかん
・薬物やアルコールによる急性中毒やその依存症
・高次脳機能障がい
・発達障がい など

 

【 取得条件 】

・精神疾患及び発達障がいがあるために生活に支障があること
・初めて精神科・心療内科で診断を受けたときから6ヶ月以上経過していること

6ヶ月以上というのは、現在の主治医の元に6ヶ月通っていなくても構いません。複数の医療機関を転院してきた方は、最初に診断を受けた医療機関から含めて6ヶ月以上経過していれば条件を満たします。

 

【身体障害者手帳・精神障害者保健福祉手帳の取得の流れ】

  1. 市区町村の障がい福祉窓口で説明を受け、所定の様式の申請書類をもらう。
  2. 主治医に手帳用の診断書を書いてもらう。
  3. 市区町村の障がい福祉窓口に診断書・顔写真・必要書類一式を提出する。
  4. 審査され、障がい等級が決定します。

 

療育手帳

知的障がいのある方に交付される手帳です。子供の頃に取得する場合が多いですが、大人になってから取得することもできます。
療育手帳の制度は法律ではなく政府の通知にもとづいているため、全国一律の基準はありません。名称も自治体ごとに異なります(東京・横浜では愛の手帳、名古屋では愛護手帳など)

児童相談所または知的障がい者更正相談所において知的障がいであると判定された場合において療育手帳等が交付されます。
18歳未満の児童は児童相談所で、18歳以上の人は知的障がい者更正相談所などで判定されます。大人になってから事故などで知的機能に障がいが生じた場合は「知的障がい」には含まれないため、療育手帳の対象外となります。

障がいの程度はIQや日常生活動作などを総合的に判断して認定されますが、認定区分や基準は自治体により若干違いがあります。
一般的な療育手帳では、障がいの等級をアルファベットで表しますが、東京都の場合は、
1度(最重度)2度(重度)3度(中度)4度(軽度)と表記します。

 

【 取得条件 】

「知的障がいあり」と判定されること。判定の細かな基準は自治体により異なります。

 

【療育手帳の取得の流れ】

身体、精神と同じ流れですが、自治体によって名称や申請方法、判定の基準が違います。
申請者が18歳未満か18歳以上かで、判定を行う機関が変わります。18歳未満の判定は児童相談所で、18歳以上の判定は知的障がい者更生相談所で行われます。18歳を超えて初めて療育手帳の申請をする場合は、子どもの頃から知的障がいがあったかどうかを調べます。

判定機関では、知能検査をしたり、子供の頃の様子や今困っていることを詳しく聞き取ったりして障がいの状況を客観的に判断します。本人が説明するのが難しい場合は、子供の頃を知っている親や保護者、主治医からヒアリングする場合もあります。
また、同行が難しい場合、福祉事務所の担当者が発達期に関する情報の収集と判定に立ち会います。
申請から発行までは約2ヶ月かかります。

療育手帳には有効期限があり、定期的に更新する必要があります。18歳になったときなど更新が必要な年齢もあります。
期限が来たら18歳未満の人は児童相談センターで、18歳以上の人は知的障がい者更生相談所で再判定を受け、更新手続きをします。また、障がいの程度が大きく変わったときも更新手続きをします。

各手帳は申請から約1ヶ月~2ヶ月で発行されます。いずれの手帳も、手帳に使用する写真は基本的にずっと使うので、写りのいい写真を選ぶことをおすすめします。

 

それぞれの手帳で受けることができるサービス

身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳

医療費の助成(身体・精神)

18歳以上の身体障がい者は医療費負担の自己負担分が原則1割で済みます。
地方自治体ごとに医療費助成もあり、一部負担金だけで医療を受ける事が可能です。

名古屋市の障害者医療費助成制度では、下記の条件に当てはまれば自己負担分もかかりません。

・身体障害者手帳1級から3級(ただし、じん臓機能障がいの方は1級から4級、進行性筋萎縮症の方は1級から6級)をお持ちの方
・精神障がい者保健福祉手帳1級から2級をお持ちの方
・知能指数が50以下と判定された方
・医師に自閉症状群と診断された方
・特定医療費受給者証(指定難病)をお持ちで、日常生活が著しい制限を受けると医師に証明された方

精神障がいの方は、自立支援医療という、通院に限り医療費自己負担分の一部が補助(健康保険の加入が必要)される制度があります。
これにより通院でかかる診察代・薬代が1割負担になります。

 

補装具の助成(身体)

補装具は、車椅子・補聴器・盲人安全杖・義肢・歩行器などのことを言います。
補装具の交付・購入・修理で必要な費用の助成が受けられます。その際の自己負担額は原則1割です。

 

リフォーム費用助成(身体)

住宅リフォーム費用の給付が受けられます。

 

所得税、住民税、自動車税の軽減(身体・精神)

等級によって変わりますが、一定金額の所得控除が受けられます。
「障害者控除」「特別障害者控除」「同居特別障害者控除」という種類の控除になります。

これらの対象となるのは、手帳を持つ本人が納税者である場合、または精神障害者保健福祉手帳の交付を控除対象配偶者・扶養親族が受けている場合です。
また、1級の方と同居している場合には、年末調整か確定申告で申請することで配偶者控除・扶養控除に加算があります。

その他、相続税・贈与税に関しても特例を受ける事が可能です。

 

療育手帳

  • 特別児童扶養手当
  • 障害児福祉手当
  • 特別障害者手当
  • 心身障害者福祉手当重度心身障害者手当
  • 心身障害者医療費助成

療育手帳によって受けられる手当ては上記5種類がありますが、国からの手当てか地方自治体からの手当てかによっても手続きは異なります。
また、療育手帳でも税金の所得控除を受けられます。

 

3つの手帳共通で受けることができるサービス

公共料金割引サービス

公共交通機関である鉄道・バスなどを使用する際、手帳を提示することで運賃割引サービスを受ける事ができます。名古屋市交通局や近畿日本鉄道など、公共交通機関によっては障がい者用の割引ICカードがあります。

タクシー・飛行機・高速道路料金も割引を受ける事ができますが、適応される手帳とされない手帳があり、サービスによって事前申請が必要な場合があります。

例えばJRでは、身体・知的障がい者の運賃割引があります。

  • 第1種障がい者とその介護者は普通乗車券、回数乗車券、普通急行券、定期乗車券が50%割引
  • 12歳未満の障がい者とその介護者は定期乗車券(小児定期乗車券を除きます)が50%割引
  • 第1種、第2種障がい者が単独でご利用になる場合は普通乗車券が50%割引(片道100kmを超える場合)

手帳をお持ちの方は、使用する交通機関が割引対象になっているかを調べてみることをおすすめします。

 

その他割引サービス

一般的な物として、携帯電話会社の料金割引サービス・NHK受信料・美術館・博物館・動物園の入場料割引が受けられます。

 

障害者雇用

 

「身体障害者手帳」「精神障害者保健福祉手帳」「療育手帳」を持つ方が対象。

 

障害者雇用促進法に基づく就職活動・転職活動が可能になります。
一般事業主で、45.5人以上の従業員がいる民間企業は、従業員数の2.2%以上の障がい者を雇用する必要があります(国・地方公共団体なら2.5%)

雇用率を達成していれば、国から障がい者雇用調整金が事業所に支給されます。達成していなければ障がい者雇用納付金を徴収されます。

 

▽注意しなくてはならないこと▽

基本的に、障害者手帳を所持していることは会社に報告する義務はありませんので個人の判断において、開示せずに一般採用で就職活動をすることは可能です。
ただし、一般枠で就職して所得税の障害者控除を受けたい場合などは、会社に書類を提出する必要があるため障がい者であることが明らかになります。

もし障がい者であることを明らかにしたくない場合は、書類の提出をせずに自分で申告を済ませなければいけないなどの手間がかかる可能性があります。

まとめ

障害者手帳を取得することへのデメリットは特にないと思います。
ただし、手帳を取得することでご自身の障がいを事実として受け入れなければならないという心の中での見えないプレッシャーがあるかもしれません。

自分にとって必要だなと思った場合に取得しましょう。
無理に取得するものでもありません。
しかし、取得することで生活の負担がかなり減るかと思います。
積極的に使って障害者手帳のメリットを上手に活用しましょう。